南房総ツアー2: 高家神社 “庖丁式”
訪問日 「2009/09/13」 ※最近の過去記事は → こちら
さて、こちらの 高家神社。
祀るは日本唯一の “料理の祖神様”、磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと) ・・・てなウンチクはさておき、漫画 『将太の寿司』 を読んだ人ならご存知かも。
全国寿司職人コンクールで 激闘の舞台 になったのが、ここなのです!
“庖丁塚” のある神社だけに、マンガの中では「この魚には、普通の庖丁じゃダメだ!」と察した主人公が、この神社の “あるもの” で庖丁に大胆な仕込みを加え、一発逆転を決める!という展開でした。
( えーと、ネタバレは避けたいので知ってる人はコメント欄でバラさないでね☆ )
本日、「庖丁式」 が執り行われる舞台がこちら。
分厚い座卓のような俎板(まないた)は、陰陽に則り東西南北に青龍・白虎・朱雀・玄武を定め、ハマグリが入った青・赤・白・黒の紙包みが春夏秋冬、同じく中央の黄色を加えて五味五色。
古代日本では紫が最高の色とされていたのだけど、ここでは古代中国の五穀豊穣祈願の仕来たりに沿って黄色を中央に据えているのだとか。
ま、このあたりまでは “いかにも祭礼” という感じですが・・・
清潔そのもののテーブルクロスで、板には塵ひとつ付いておりませんぞ、と。
そんな細心の注意でもってキレイに保ったマナ板でも、調理で使う際には必ず 塩と水 で清めます。
それも、おざなりではなく・・・ 立てヒザでもって、チカラをこめてぇ~☆
そうそう。 マナ板は、“ 拭く ” のではなく、“ 磨く ” のです!!
・・・あ、すみません。この解説はワタクシ、つきじろうが勝手にキャプションをつけているだけなので、あしからず(笑
調理場をテッテー的に磨きあげたら、ようやく食材の登場です。
その食材に触れるまえに・・・ キラリ!
カッコつけて、歌舞伎役者よろしく見得を切ってるワケではございません。
陽のあたる明るいところに刃をさしのべ、よくよくもってチェックすべし!
昨日さばいたお魚のアブラで、刃がくもってはいませんか?
調理器具、ことに生の魚体をさばこうという 庖丁 こそ、清潔を極めるべし。
そして・・・ 鮮度抜群のおサカナ といえど、やたらに手を触れて温めてしまっては、
味ばかりか清潔度までも 台無し に。
いっそ、このぐらい気をつかうのが理想と心得るべし☆
背スジを正し、精神一到。 さて調理開始かと思いきや・・・
庖丁のまえに、手にするのは 菊の花。
ワタシたちに恵みの糧を与えてくれた生き物に、敬意をこめて鎮魂。
・・・それと、実は重要!と拝察するのは、菊の花には防虫・除虫の作用があるため、調理場にハエなどを近づけない、という効用があること。
これで、役者は揃いましたね。 謹んで拝観させていただく我々も、礼!です。
ここまでが前半。
動画 はこちらですが・・・ こーゆーのって、平日にブログ掲載しても見てくれる人が少ないんですよねぇ(汗
週末あたり、お時間とご興味のある時にでもどうぞ♪
※ なお撮影は、けっこう苦労してます。左手のデジカメで動画、右手のデジカメで静止画の写真と、“二挺拳銃” 状態 で撮ってたので(汗
ここまでに仕事をなさった、白や青の衣(直垂)の方々が介添え役。
山吹色(あるいは鬱金?)の衣の “刀主” が、あらためて菊の花をかざし・・・
式庖丁 と、真魚箸 (「まなばし」=肉や魚をあつかう箸。これに対して野菜を扱うのが「菜箸」)を手にとります。
この、式庖丁。ちょっと見慣れない形ですね。昔のままの形がコレかな?
あとで南房総のお料理を試食させていただいた時、「関西では “タコ引き” と呼ばれている庖丁が、こちらでは普通の刺身庖丁の形です」 とのお話を伺ったけど・・・
それに近いような印象でした。
いよいよ、おサカナに庖丁を入れます。
そう、ここでもやはり食材には直接、手を触れない!
・・・まあ舞台進行の都合上、あらかじめ内臓を抜くなどの下ごしらえは済ませてあるのですが(汗
アタマを落としたら、寝かせていた魚体を(水中にいたのと同じ向きに)立てて・・・
このへん、面白いほどストンストンストン・・・♪、と続けて輪切りにしていきます。
マンガみたいに見えるほど(失礼)、じつに手ぎわが良く、ムダの無い動き!
あ、書き忘れてましたが今回のお題は “菊花の鰍(イナダ)” です。
ご存知の通り イナダってのはブリの若魚 ( リンク: ぼうずコンニャク様 )ですが、“菊花” と称するのは、さきほど菊の花を手向けたから、というわけではなく・・・
お見事。
このように、菊の花 をかたどって仕上げとするから!なんですねー。
凛として、美しいです。
サカナの身を等間隔に捌き、しかも切り口を揃えるという調理の基本が幾何学的に示された、この姿。
こちらの神社に伝承されている 四條流石井派一門 では、タイは9通り、マナガツオは7通り、スズキは6通り、フナは3通り、さらに魚のなかで最上位とされるコイに至っては、実に36通り(!)もの捌きかたがあるのだとか。
( サカナだけではなく、このほか鶴や鴨や鴫といった鳥の作法もあり )
「 菊の花 というだけあって、よく見ると 魚のヒレ が 花びら みたいに立つように切ってあるなぁ 」
・・・と、なんと慧眼するどい 魯様 のつぶやき。
ああーっ☆、ほんとだ!
おそれいりました!
こちらが後半の 動画 です。 ありがとうございました!!
※ この南房総の食文化体験ツアーは、南房総市観光プロモーション協議会 からの企画・ご提供をいただいたものです。
お世話になった関係各位に深く御礼を申し上げます。
→ 同じく庖丁式、「南房総千倉・魚拓荘鈴木屋 さざえのつぶやき」様の記事♪
☆ 余談追記: あの八戸の絶品 “虎鯖” 寿司!、ヨコハマに来てたんですね~。
先般ワタシは 浅草で再会 しましたが、神崎様は 思わず2本をイッキ食い!(笑)
→ 「週刊 築地紀行」 2009年9月16日の “臨時増刊号” にて
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コメント
包丁式って能に匹敵する面白さがありますね~☆
子供のころ初めてこれを見たとき(白い衣装でした)もう思いは太古の日本人の世界、空気感(~。~)に満たされて広やかな気分になりましたよ!
投稿: 早坂 | 2009年9月16日 (水) 00時06分
◆早坂様、
ええ、確かに歌舞伎のようなストーリーとは違いますけど
調理の理をひとつひとつ、しっかりツボを押さえて見せる
ので、これは平安時代のクッキング・エンターテインメントと
言えるでしょうね。
・・・そのため、自分で料理しない人が見ても意味がわからず
「ふーん」で終わってしまいそうですが(汗
んで庖丁式と一口で言っても、いくつかの流派があるんですね。
中には、あの扱いにくいアンコウを、こちらのと同じく決して
手を触れずに捌ける流派もあるようで・・・!
http://www.oarai-info.jp/ivent/anko-hochosiki.htm
投稿: つきじろう | 2009年9月16日 (水) 07時28分
ああ~ん
歌舞伎みたいな地生えのじゃなくて・・・
投稿: 早坂 | 2009年9月16日 (水) 11時00分
つきじろう様。
わぁぁ、カッコイイ!!
是非ともご一緒させていただきたかったイベントです〜〜。
(でも弱小ブロガーはダメか。。)
菊の花ってそういうものなのですね。
除虫菊てのがあるくらいだから虫に嫌われる種なのですねー!
実は、リンクさせていただきたい内容満載なのです。
次もよろしくお願いいたします!
投稿: lara | 2009年9月16日 (水) 16時29分
◆早坂様、
うう~む、阿国歌舞伎みたいなのもキライではございませんが・・・☆
◆lara様、
> でも弱小ブロガーは
いえ、少なくとも夏の元気さでは、ワタシは完全に負けてます!(爆
ともあれ除虫菊は、考えてみれば観賞用とは全く別物ですから
ワタシの見当違いかと・・・☆
そんな信憑性の疑わしいブログですので、リンクいただく際は
どうかご愛嬌程度に(笑
投稿: つきじろう | 2009年9月16日 (水) 20時11分
つきじろう 様
庖丁式を掲載する新聞や雑誌の記事を今まで拝見していましたが、そのなかでも一番丁寧な説明がされていたように思いました。記事を見て“うーん”と。感心しきりです。
「南房総の食」を磨いていく・PRしていくうえでも大変珍しい伝統儀式ですので、これをさらに盛り上げていけるように、地域の方々と取り組んでいこうと思います。
地元の宿のご主人たちの熱意と連携により、この伝統儀式も認知度が向上しつつあります。普段は、面白くていつも漫才をやっているような方々なのですが、このときばかりは真剣なのです。このギャップがまた面白いですね。
つきじろうさん、今回は本当にありがとうございました。
投稿: みずみず | 2009年9月19日 (土) 09時30分
◆みずみず様、
えーと、我ながら資料をテキトーに斜め読みしただけの状態で
好き勝手に自分流のキャプションを書き添えておりますので、
かえって怒られるのではないかと心配していたのですが(汗
ともあれ高家神社の庖丁式。地元にしっかりと根をはって、
そこに生きる多くの皆様から連綿と支え続けられてきた
骨太な本物の歴史的文化だなぁ~と痛感いたしました。
貴重な機会を設けていただき、あらためて深く感謝申し上げます。
> 普段は、面白くていつも漫才をやっているような方々
ああ、それはぜひ次の機会にはお酒もまじえて “漫才” のほうも
親しませていただきたいですね!!(笑
投稿: つきじろう | 2009年9月19日 (土) 17時59分