築地C~G
掲載日 「2008/09/20」 ※最近の過去記事は → こちら
「C」: Check 見極め
文久元年創業のマグロ仲卸業者、飯田統規(つねのり)氏、67歳。
( つきじろう注: 店名は出てませんが「樋長」ですネ )
現役のマグロの目利き。セリ開始の1時間前にマグロを下見(下付け)。
蛍光灯の光をあてにせず、懐中電灯の光を当てるのは見本として輪切りにされた“尾の身”。内臓をとった腹腔内もチェック。「中の膜が淡いピンクで、脂をたくわえているものを」と。
尾から身をちぎり、時間をかけて手でこね、色ツヤの変化を念入りに確かめる。淡いピンクから赤へ、色の変化が早いものは身が水っぽい。
「今日のマグロの中では、鹿児島のものが一番いい。相当の値段に・・・」。
そのマグロ、重さ226キロ。梅雨の時期は上物が少なく、激戦が予想される。
5時30分、セリ開始。この続きは「F」の項目で・・・
「D」: Dynamics 原動力
( つきじろう注: ナレーターは男性と女性が交互に入れ替わり・・・☆)
東京都庁、そして都内各所の空撮映像。
世界有数の大都市、東京。築地市場は、ここで400年かけて成長してきた。
1603年。江戸幕府、開府。海を埋め立て、水路をはりめぐらせて巨大流通網が作られた。
築地市場の前身である魚河岸は、海に近く新鮮な魚を運びこめる日本橋に置かれた。
昭和10年、隅田川沿いに移転。それが築地市場。広さは東京ドーム5個分。
仲卸業者の店舗数は784軒。
築地といえば江戸前の魚。巨大都市の人々のくらしを海の恵みで支えてきた。
「E」: Enthusiastic visitors 外国人観光客
行き交うトラックのあいだを縫うように歩く、外国人。
マグロのセリ場を背景にポーズをとる、ブロンド美人。
しのぎを削るセリ場に、ホットパンツの女性。
<翻訳字幕>
「東京で行くべき観光地トップ10の中に入ってます。魚市場は4番目」
「“早起きして魚市場を見て新鮮なスシを楽しもう”って。もうお腹がぺこぺこ。お寿司屋さんに行くわ」
「インドのニューデリーから来ました。娘がとても見たがっていたので」
(その娘さん。築地をどうして知りましたか?との質問に答えて)「みんなが話しているんですもの」
「おもしろいですね!興奮します。一人か二人が値段をあげるだけだからすごく速い」
「実に感動的です。とてもいい」
「強烈だよ。とっても長い包丁でマグロを切って、これまでに見たこともない」
「驚くべき市場、すばらしい市場です。実に良い雰囲気、なんとも新鮮な魚。
東京では必見の場所ですね」
香港のガイドブックによれば京都に次ぐお勧めスポットだとか。
( リンク: サントリーグルメガイド様 )
ほかにもシンガポールetc.・・・
「人々の働きぶりは荒っぽいけど実はそうじゃない。やさしくて、辛抱強い。とてもステキです」。
「居るだけで心がやすらぐ場所ですね。だから私は築地が好きなんだ」
(買い求めたTシャツを手に)「ええっと、ブリって書いてあると思うわ」
「カナダのトロントから来ました。魚を殺してるのを見たけど、とっても怖かった。」
「混沌!、秩序ある・・・秩序ある混沌、だね」
ナレーター、「秩序ある混沌・・・うまいこと言うねぇ。座布団1枚!」
「F」: Fight 競合
舞台は再び、百戦錬磨の仲卸業者がつどうセリ場へ。
さきほどの飯田氏。「さあ、戦闘開始だね。いよいよ」。
上物ばかりを扱うセリ台にあがったのは、お互いに手のうちを知った9名。
誰もが狙っているのは、この日の「1番」のマグロ。久々に出た1級品!
セリは“キロ6千円”から始まり、“キロ1万4千500円”で飯田氏は降りた。
飯田氏にセリ勝ったのは若手のホープ、山口幸隆氏(「大善」)。
「いいサカナは絶対、取られたくないですからボクは。たとえば下付けの倍でも買います、いいサカナだと思ったらね」
この二人のあいだに、どのような駆け引きがあったのか?
場面は、その日の下見(下付け)にさかのぼる・・・。
飯田氏は、1番のマグロの品質を見定め、キロ1万円までなら買おうと決めた。
そして競いあうライバルは山口氏になると考えていた。なぜなら、この日の山口氏の店は上物のマグロが品薄になると知っていたから。
飯田氏。「金曜日、土曜日と、そっくりウチが買っちゃってるからね。彼らは今日買わないと、間に合わないんじゃないかなと。だから今日1番のはね、“とられてもいいセリ”なんですよ。でも、あんまり安くは取られたくはない」。
山口氏の状況は、飯田氏に見抜かれた通り。このままでは得意筋に顔向けできない・・・
「買うか買わないかですから、ボクは行くだけですね」
セリは、飯田氏と山口氏の一騎打ちに。
飯田氏は、予定の1万円を超えても平然とセリ上げていく。
「彼らの顔をみて、大体わかりますから。ああ、このへんで止まるなと。
キロ1万円を超えたら、利益は絶対でません。だけど(ライバルには)高いのを持たせておいて、と。相手にリスクを背負わせる、と」。
相手が降りる寸前までセリ上げるのが飯田氏の狙いだった。
山口氏、「ああ、まだ行くのかよ~とか、そろそろ降りてくれないかな~とか、そういう気持ちは、やっぱりありますよね」
セリ勝ったものの、複雑な表情・・・
飯田氏、「今日みたいに、いいのが1本あれば・・・、それなりに値段をつけてあげるのが漁師さんのためになるし。どうしてそんなに高い値をつけるの?って言われたら、相手に黒星つけるってのもあるし」
山口氏がセリ落としたマグロは、山口氏の店舗へ。
マグロを買う仲卸には、リスクがつきまとう。どんなに技量を積んでも、100パーセントの確率で中身の良し悪しを見抜くことはできない。
「水っぽいな・・・」 高値で買ったのに、思っていたのとは大違い。
山口氏、「結果的には、サカナが良くなかったんで “やられたな” って感じですけど。失敗も成功も、買ってからのことですから。とにかく買わなきゃいけない・・・(中略)、結果、惨敗ですけどね(苦笑)」
「G」: Gifted bay 東京湾
6月下旬の夜明け前・・・
築地市場を支える江戸前アナゴ漁師、野口喜久雄氏の朝が始まる。
「10日ぐらい前は、アクアライン近くにいたんですよ。だけど今は、沖へ下がり加減でね」
前日、海に入れた仕掛けを引き上げる。
ここで獲れる真穴子は、江戸時代から安くて栄養豊富。今も昔も庶民の味方。
今朝の漁は・・・ 野口氏「この調子でいって、150キロぐらいじゃないかな。いまいち・・・最近じゃ、いいほうかな」
かつて、江戸城から見える海が ”江戸前” と呼ばれた。それが転じて、メバル、スズキ、ボラなど、ここで獲れる魚が江戸前と呼ばれている。
午前9時、漁船でレインボーブリッジをくぐって隅田川をさかのぼり、築地へ向かう野口氏。
築地を通して人々の舌を楽しませていることが、誇り。
まるまると太った穴子が、どんな天ぷらになるのか?・・・ 続きは “O” の項目で。
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コメント
すごいな~「F」ネットオークションとか昔やったことがありますけれど、桁が違いますもの。みんなが買い控えていると、自分はいいものだと思っても、へっ(・。・?なんかわけあり?って急にこわくなったり・・・。
山口氏、高いお月謝ですけれどこうやって腕磨いていくんですね(><;ああ、コワコワ!
投稿: 早坂 | 2008年9月20日 (土) 22時48分
「秩序ある混沌」、同じ内容のことを11年前にサンノゼで
フランス人に言われました。東京がニューヨークと違うのは
秩序があることだと。
投稿: ろ | 2008年9月20日 (土) 22時56分
◆早坂様、
なにしろプロの商売人同士ですからねー。だまされたって
責任はすべて自分でとるしかないってことで。
若手のホープ山口氏、いま40代だそうです。それに
67歳の飯田氏。お二人とも目の輝きがスゴイです。
職場にいるときのワタシ、あんなに目を輝かせることが
あったかなぁ?なんて身につまされたりして・・・☆
◆ろ様、
秩序ある混沌ってのは、やっぱり国民性なんでしょうか。
阪神大震災のときも、海外メディアでは「壊滅的な被害に
あったにもかかわらず、暴動も起こらず被災者は忍耐強く
自発的に行列をつくって・・・」と驚きを交えた報道が
あったとか。
台風にも旱魃にも、じっと耐える農耕民族。
こういうときも互いの配慮が先にあって、弱肉強食に走る
という発想は生まれにくいようですね。
投稿: つきじろう | 2008年9月21日 (日) 08時09分