番外(大阪):「麺哲」
訪問日 「 2007/08/14 」
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「麺哲」(豊中)
大阪のラーメンといえば、ここはぜひ行っておかねば!と考えていた課題店。
週末は昼間も営業しているのだけど、今回は都合により筆者が苦手とする夜に訪問。
阪急電車の豊中駅から線路沿いに徒歩数分・・・ あった☆
以下、ラーメンにありつくまでの、ちょっと長い前置き(笑)。
壁に据えられた扇風機が全力で回っており、カウンター席に座った客の顔に 熱風 を吹きつけてくる。
いちおうエアコンは設置されているが、まるっきり役に立っていない。
カウンターに囲まれた厨房スペースには、名物オーナーの庄司氏の姿は無し。若手の店長さんに任されているようだ。
店内全体に、独特のピリッと引き締まった緊張感 が感じられる。
まずは 「肉醤油」(900円) を注文。
ちなみに当店は、初訪問の客が「つけ麺」を注文しようとすると、「うちのラーメン、まだ食べたことないですよね?」などと言われて断られることもあるそうだ。
ここのラーメンは1度に4杯分を作るようで、このとき筆者のラーメンは2番目のオーダーだった。 大きくて分厚いチャーシューは切り置きではなく注文のたびにスライスし、盛り付ける前にフライパンで焼きたての状態に。
( チャーシューは2種類あり、薄いほうは、ある程度まとめてスライサーを使っていた )
丼は、熱湯で温めてからスープを注ぐ。
随所に、味のためには手間を惜しまぬ配慮 が見てとれる。
が、いざ出来上がって給仕の段階で トラブル 発生。
1番目にラーメンを出す客を間違えたらしく、「失礼しました!」 と丼を交換。
次に筆者を抜かして3番目と4番目のお客さんにラーメンを出して、最後に2番目の筆者にラーメンを・・・ と思いきや。
目の前にラーメンが出されたと同時に 「それ、作り直し」 と店長が告げ、躊躇なくスタッフが 「申し訳ありません!」 と、その丼をひっこめて 残飯入れにザバッ!と。
「 あ、そのラーメンでいいですから 」 と言いたかったが、そのヒマも無かった。
給仕のミスによる、わずか10数秒のロスタイムだったが店長の許容範囲を超えたということか。
筆者の脳裏に、なんとなく デジャヴ のような光景が浮かんだのだが・・・ それについては後述。
さらに驚いたことに、次の4杯分のなかに含めて作り直すのではなく、ほかに待っているお客さんたちがいるのに、筆者の1杯分だけを丁寧に作り始めた。
待つこと、さらに数分・・・ 「 失礼しました、どうぞ! 」。
あー、すんませんね。でも、さっきのラーメンで良かったのに・・・☆
と、一口すすってみた。
「 ! 」
うまいっっっ☆
夜が苦手で頭がボーっとしていた筆者だけど、思わず目がさめる衝撃。
小麦のうまさが凝縮された麺は、しゃっきりピンピン!
油脂に頼らず素材の美味しさをぶつけてくる、バランス抜群のスープ!
( ああ、いつもながら何と貧しい筆者のボキャブラリー・・・ )
恥ずかしながら筆者は最近の首都圏の有名ラーメン店をあまり食べ歩いていないのだけど、おそらくラーメン界のトップスター群のなかでも全く遜色のないクオリティを主張できるのでは、と思う。
当店のメニューには「大盛り」は無く、かわりに「替え玉」があるのだが、これも「当店自慢の麺を、いちばん美味しい状態で食べてもらうため」という自負心が伺える。
感嘆しつつ食べ終わって、店長さんに話しかけてみた。
「 “鶏そば”って、スープは醤油味ですか? 」
「 いや、塩です。名古屋コーチンのスープで 」
「 メニューの“塩”ラーメンとは違うんですか 」
「 違いますよ(笑)。それを同じって言われたら、ちょっとね(ニヤリ) 」
言葉の端に、強烈なプライドを覗かせる店長さん。
そこで追加注文で 「鶏そば」(1,100円) をいただいてみた。
こちらはニンニクチップの香りが強い。
うーん、クチコミでも読んでいたが、これは塩味が強すぎて筆者はパス(笑)
ま、鶏の旨みを最大限に引き出すためには、このぐらい強い塩が必要、という判断なのかもしれない。
スープは残したけど、麺と具はほぼ全て食べました。
写真では丼の奥のほうに小さく写っている鶏肉団子が、やたらと美味しい逸品だった。
ごちそうさまっっっ♪
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【 以下、長い余談(笑)。おヒマとご興味のある場合のみ、どうぞ・・・☆ 】
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映画 「みんなのいえ」 (監督&脚本:三谷幸喜氏)で、こんな場面がある。
家づくりに悩む主人公が、あるバーでカクテルを注文する。
バーテンダーはカクテルを作って・・・ 「だめだ」 とつぶやき、流しに捨てる。
主人公が 「そんな、作り直さなくていいよ」 と言っても、バーテンダーは 「いえ、自分の問題ですから」 と、主人公を待たせて作り直し・・・ やはり 「だめだ」 とつぶやいて、それもまた捨てる。
ちなみにカクテルマニア時代の筆者も、そんな場面には何度か出会ったことがある。
不幸にしてというか自業自得というか、店側が筆者について 「こいつはカクテルオタク」 という烙印(笑)を押してスタッフ全員に “指名手配” している場合もあり・・・。
ときには、「こいつで “人体実験” してみよう」 てな趣向もあったりする。←おい☆
だいたい一番いけないのは、そういう若手の仕事ぶりをお店のチーフが叱るどころか 「よしよし、頑張ってるな」 と、温かく見守っていることだったりする(笑)。
ああ、缶ビールでも買って歩道橋の上で飲めばよかった・・・☆
何もここで究極のカクテルを飲もうってんじゃないんだよ。ほどほどの値段で、ほどほどのカクテルを作ってくれりゃいいんだよぉ。
こだわりはいいから、普通に飲ませてくれぇ~☆
・・・と筆者なら思うところなのに。
映画での主人公は、これを見て自分自身の家づくりについて啓示を得ることになる。
“そうだ、オレも自分のこだわりを徹底的に貫いてみよう!”
なんと殊勝で忍耐強い主人公! あんた、おかしいよ(笑)
この映画のユーザーレビュー(上掲リンク内)では、「このシーンが大好きだ」 との声も。
あんた、バーで同じような目にあったことは(以下略
ともあれ、
このバーテンダー氏を、ある種の 「妥協を許さぬ模範的な人物像」 と見るか、それとも 「客をないがしろにした職人の自己満足」 と見るかで、この場面の評価は 正反対 になるだろう。
そういえばNHKテレビの 「プロフェッショナル 仕事の流儀」 でも、同じようなエピソードを見たことがある。
ある伝統工芸の職人が、番組の司会者から 「あなたが、これだけは絶対に守ろうと考えているルールはありますか?」 と質問されて、こう答える。
「 ほかの人たちは気がつかないようなことでも、自分自身が “これは妥協したな、失敗だったな” と思ったら、絶対に完成品にしないことです 」
うーむ。
この頑固なこだわりがあってこそ、職人として精進できるのだろう・・・ という点は、まあ納得できる。
ただし 職人に守りたいルールがあると言うなら、客にだって、職人に守らせたいルールがある。
ラーメン屋だろうと寿司屋だろうと、お店というのは客を喜ばせるための場所であって、職人の自己満足に客を付き合わせる場所ではない。
( 参考 → 「高菜、食べてしまったんですか!?」
参考追記: http://toriaezutuzukumade.blog85.fc2.com/blog-entry-126.html )
初訪問でメニューを見て「つけめんを食べたい」という客に、どうして「つけめん」を食べさせてはいけないのか。
それがイヤだって言うのなら、チェーン店のスタッフと同じく 自動販売機の部品のように働いてくれるほうがマシではないかな・・・と、個人的には思う。
ま、そういう両極端のどちらかに走る必要は無いだろうけど。
現実的には 「客を見て仕事のレベルを変える」 というのが無難な処世術かなぁ。
・・・・・・ ミ☆
ちなみに筆者の基準で “良心的なバー” では、しくじったカクテルをバーテンダーが「これ失敗なんですけど、タダでいいから飲みますか?」 とすすめてくれる(笑)
この場合は筆者もカクテルの知識があるから、「そこにオレンジビターズを垂らして」などと自分の好みに味を調整して楽しむことができる。
あと筆者が好きな三田のラーメン屋さんでは、オヤジさんが時々「あっ、しまった・・・」と小声でつぶやいてから、「ごめんよぉ~!、これ残してもいいからねぇ~、ヒッヒッヒ☆」 と言いながらラーメンを出してくることがある。
これを「良心的」と言っていいのかは(略
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